テアトロミリアム(旧栃木県の演劇情報)

栃木県内の演劇について語るブログです。

七夕の夜に

劇団ささかま第二回公演

作 プリンカレイド

2024年7月7日(日)14時

於 アトリエほんまる

 

個人的なことだが昔某専門学校の非常勤講師をしていた頃、卒業式の度にずらりと座る学生たちの姿を見ながらある感慨にとらわれた。様々な地域から集まって三年間ともに過ごした学生たちも、卒業以降それぞれの環境の中で新しい人間関係を築いていくのだろう。再び会えなくなる同級生もいるだろう。学校は地域、家庭環境その他異なった人間同士が限定された環境で出会い、付き合い、学ぶことができる稀有な一期一会の場所なのだなと。


以上は講師としての視点なのだが、この「七夕の夜に」は学生からの視点が描かれている。七夕の夜に一年に一度会うことができる織姫と彦星の伝説に絡めて、間もなくやってくる卒業とそれぞれの進路、旅立ちへ向かう男女三人組の高校生の心のゆらぎを描いている。


ひまりとあおいとみなとの幼馴染三人組。感染症流行で中止になっていた町内の七夕祭りが再開されるということでノリノリなあおいとみなと。ただ一人ひまりだけは何かを悩んでいる様子。賑やかな祭り当日。混雑の中で二人とはぐれてしまったひまりは占い師を名乗る男に出会い流れの中で悩みを打ち明ける。地元進学の二人と違い、一人だけ離れた土地の大学を目指すことの後ろめたさ。話すべきか迷っていると。一方二人は浴衣の女性と出会いともにひまりを探す。最後再会した三人。遠隔地大学進学を打ち明けるひまりを受け入れる二人。3人は進学後もまた会おうと約束する。やっと会えた謎のカップルはまるで織姫と彦星の化身?いや普通の訳あり男女なのかも。祭りの最後、打ち上がる花火。再開される祭り、花火、そして再会を約束した三人組。


何気ない日常のひとコマ。小さな事件。でもこのテーマや感覚は大学受験が極めて身近な記憶だった世代だからこそのものなのだろう。小中高と少しずつ世界は広がってはいるがまだまだ狭く濃密な関係性の中にある幼馴染たち。高校から大学へ。さらに広がって行く世界の入り口での戸惑いが描かれていた。そこに謎のカップルと七夕の伝説を加えることで物語としての膨らみを持たせている。


あおいとみなとの元気の良さと繊細さを感じるひまり。怪しい長髪の男と浴衣姿がきれいな女性のカップル。その他のモブも掛け持ちで衣装の着替えや場面転換も大変だったと思う。よく頑張っていた。


ただ場面転換の際各シーンが途切れがちなのが気になった。せっかく祭り提灯がかかっているのだからお囃子をずっと流したままでもいいのではないかと思う。役者が出てきたら小さく、はけたら大きく。それだけでも祭りのイメージはつながるのではないだろうか。


もうひとつ、芝居をリアクションの連関で演じることを意識するといい。セリフや演技の前に中身を作ってから表現するのではなく、相手のセリフや演技を通常の自分がしているのと同様にきちんと受けてから返すようにすると全体の流れもテンポもよくなると思う。


昔若手だった劇団が年月を経るとともにいろいろな意味で中堅、ベテラン劇団になって来ているのを感じる今日この頃。このような若い劇団が出てきてくれるのはとても嬉しい。今回第二回公演だとのこと。この後第三回それ以降も楽しく元気に公演を続けていってほしい。演劇、演技はPLAY、まず自分が楽しいと思えることが大切なのだから。


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