ファンファンミュージカル 第13回公演
作・演出・振付 萩原真理子
作曲・音楽監修 齋藤どらみ
2026年10月11日(日)11時
宇都宮市立南図書館
サザンクロスホール
宇都宮のミュージカル劇団ファンファンミュージカルの第13回公演である。この劇団はもともとは市の芸術祭のミュージカル部会として発足したもので当初いろいろ苦労した経緯は比較的近くで筆者も見てきたので今回の作品を観てよくここまで成長してきたものだとしみじみと思った次第。
とにかくミュージカルだった。それもアメリカハリウッド系列のセンスの良さとおしゃれさを兼ね合わせた舞台になっていた。
とある街なかのカフェテリア。ブラックコーヒーとパフェしかないそこは店主の男性の夢の結晶。そこにさまざまな客がやってくる。郵便屋も果物屋もやってくる。コーヒーの香りに包まれて美味しいパフェを楽しむ常連達。そこに大荷物を抱えた新規の客がやってくる。孤独。何かを残したかった、成したかったのに何もできなかった虚しさと絶望。何故か成し遂げられてしまったバクダン製造。ついでだから店ごと客ごとふっとばそうと。その瞬間彼女はそこの支配者になれた。でも・・・。
ばらばらでそれぞれにいろいろ抱えていたものもいないものもやはりみんな関わり合って助け合って一緒に歩いていけたらいいね。という孤独からの脱出の物語。
客席に座って舞台を見た瞬間見えたのは。サザンクロスホールの壁面をそのまま内装として使ったおしゃれなカフェテリア。入り口、所々に置かれたレンガ風のオブジェが店の境界を示し、他にはテーブルとカウンターと椅子。舞台全体をバランス良くうまく使って街なかの店を作り出していた。
雑踏。行き交う人々。皆タップダンス用の靴を履いており、その靴音が音楽と相まって賑やかな街路風景を描き出す。もうすでにここがミュージカル!だった。やがて三々五々やってくる客。そして常連同士の日常的言葉のつつき合いが一転バクダンを持ってやってきた女性のカミングアウトで緊張感満載の非日常に変わる。全員が個性的で実にいい味をしているのだがやはり強く記憶に残ったのはバクダン犯役の新井陽子の全力投球の演技。孤独を拗らせブチ切れた感じ。そして作・演出・振付と今回もリードを取った萩原真理子の存在感。この間のバックシャンの公演でのまったりした天然風とは異なりしっかりとした行動的な役を演じていた。この方は本来ダンス方面の専門家だがミュージカル劇団を表も裏もも引っ張っていく頼もしい存在になったなと感慨を持った。
今回は語るように歌うシーンもありまだ発声に不安定さはやや残るがコーラスの力強さは素晴らしかった。しかしこの劇団の魅力はやはりタップである。3人のタップクルーの見せ場も良かったがなんと行っても総勢18名が踊るタップの迫力は見どころだった。ミュージカル劇団を名乗る団体は数あれどこのスケールのタップができる劇団はそうはないだろう。
筆者子供の頃ミュージカルは洋画劇場でしか観たことはなかったが当時ハリウッド製ミュージカルといえばタップダンスだったような記憶がある。今回の舞台で傘が出てきたときは思わずジーン・ケリーの「雨に唄えば」を思い浮かべてしまった。今回の舞台はあの頃の楽しいアメリカ製ミュージカルの匂いがした。
ただ以上のような雰囲気の割に使われていたネタの表現がややシリアスすぎたかなという気はした。途中で子供の泣き声も聞こえたくらい迫力ある真に迫ったシーンがいくつかあったがちょっと重すぎたかも。テーマは今という時代を生きる人々の心情をきちんと切り取っているし、ネタ自体もそれでいいと思うが途中もっと笑いに抜いたりど直球ではなくかすめたりそらしたりできればよかったかもしれない。それには間合いやテンポが重要になるが。この重さにラストの大団円がちょっと引きずられたように客側として感じた。
とはいえミュージカルとなれば脚本、作詞、作曲、歌、ダンス、演技とやることも多く時間も費用もかかるだろう。何より歌ってタップを踊るとなれば体力もかなり要。その中でオリジナル作品の公演を続けているのは情熱と意欲があるからだと思う。栃木県内でも唯一といえるタップのできるミュージカル劇団としてこれからも上演を継続していってほしい。






